どらぐら日記

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2021年度のグランパスの経営状況

先日、Jリーグ公式サイトで2021年度Jクラブ情報開示資料が公開されました。というわけで、今年もグランパスの経営状況について考察してみました。

1.3期連続の赤字 当期純損失は約3億円

 まずは、過去5年分の損益統括表をご覧ください。

2018年度までは5期連続の黒字だったものの、2019年度からは3期連続赤字。とりわけ2020~21年度は新型コロナウイルスの影響により当期純損失の金額も大きく、昨年度は3億3900万円の赤字となりました。

なお、Jリーグクラブライセンスの交付については、2021年度末まで、債務超過および3期連続赤字を判定対象としないとする特例措置を設けています。

 

2.営業収益は約18%増 ますます頼りになる広告料収入

営業収益は、前年度比17.9%増の61億7300万円でした。名古屋に限らず、ほとんどのJ1クラブは新型コロナウイルスの影響を最も受けた20年度からは増収となっています。名古屋の場合、2年ぶりに60億円の大台を超えています。

以下は、J1各クラブの営業収益と成長率のグラフです。

 

営業収益の内訳は①広告料収入②入場料収入Jリーグ配分金(放映権料、商品化権料、賞金など)④アカデミー関連収入⑤物販収入(グッズ販売)⑥その他収入(移籍金、ファンクラブ収入など)グランパスとJ1平均の営業収益の内訳を比較してみましょう。

 

毎年のことですが、J1平均と比べ、グランパスは広告料収入の割合が高いです。毎年、営業収益の6割程度を占めています。

広告料収入が多いこと自体は良いことですが、過度な依存は望ましくありません。最も経済が落ち込んだ2020年度から経済は回復傾向にありますが、景気が悪くなったり、降格したことでスポンサーを降りる企業が出てきたりして広告料収入が減ったら、クラブ全体の収入にも大きく影響してしまう可能性があるからです。

とは言え、Jリーグのスポンサー企業は、コロナ禍であっても継続してサポートをしてくれる傾向にあるようです。グランパスの場合、コロナ禍以前の2018年度と同等の広告収入を得ています。Jリーグ全体で見ても、コロナ禍以前の規模に戻りつつあるようです。

 

3.回復しない入場料収入 コロナ禍以前と比べて約48%

先ほども書きましたが、広告料収入に依存しているクラブは、不景気や成績低迷を理由にスポンサーが離れてしまった時が怖いです。それに比べて入場料収入は、入場者数が大幅に落ち込まない限りはそれなりの収入が見込めます。また、入場者数が増えれば、スポンサーの獲得、グッズ販売、ファンクラブの加入などにも好影響をもたらします。

しかし、ご存じのように、コロナ禍の20年度以降は入場者数が激減。当然、入場料収入にも大きく影響しました。

ここでは、グランパスの入場料収入及び主催試合(リーグ戦とルヴァンカップ)の入場者数の推移を見てみましょう。

 

入場料収入と入場者数は2016年から2019年まで増加の一途をたどっていましたが、2020年度は激減。2021年度は多少持ち直したものの、2019年度と比べると約48%に過ぎません。言うまでもなく、入場料収入の少なさが約3億円の赤字となった最大の原因です。

 

今年度は基本的には入場者数の制限はないものの(声出し応援OKの試合は除く)、8/15現在で平均入場者数は16,896人(J1で6位)。最も入場者数が多かった2019年度の平均入場者数(27,612人)に比べると約6割程度です。

 

個人的な感想ですが、今季の入場者数の伸び悩みには、コロナ禍をきっかけにスタジアムでの観戦をやめてしまった人が一定数いると思われ、中長期的に見ても厳しいです。チームの調子によるところもあるのでしょうが、約3万人が集まった「鯱の大祭典」以外の試合でも、コロナ禍以前の盛り上がりを取り戻す日がいつ来るのか、心配です。

 

4.頑張って減らした人件費 チームを結果を出す

次に、人件費について。デロイト・トーマツ・グループが毎年発表している「Jリーグマネジメントカップ」によると、営業収益に対する人件費比率は50%を超えないのが望ましいと言われています。2019年度のJ1は、平均で50%でした。また、欧州5大リーグの平均は50~75%程度と言われています(2020年度は特殊なので、あえて2019年度の数字を書きました)。

グランパスの人件費と営業収益に対する比率の推移です。

 

2021年度の人件費は30億890万円。前年度比で4億3600万円減少(12.4%減)。営業収益に占める人件費の割合も、67%から50%に減少。営業収益が増収だったことと、人件費を減らしたことで、J1平均の56%よりも下回るという、経営的には素晴らしい数値となりました。

昨年度はACLに出場したこともあり、FWシュヴィルツォクを獲得するなど、大型補強を行ったわけですが、意外と人件費は減らしていたのですね。

 

ちなみに、J1全体では以下の通り。神戸の人件費は相変わらず突出していますね。また、浦和は営業収益がJ1で屈指なのに、人件費/営業収益は毎年低いんですよね。近年の補強は、かつてに比べると地味ですし。まあ、浦和には浦和の戦略があるのでしょう。

 

 

続いて、人件費と勝ち点の関係。名古屋の勝ち点1あたりの人件費は、4680万円。2019年度は1億740万円だったので、改善されてはいますね。昨年はリーグ戦5位だったものの、ルヴァンカップで優勝、ACLも日本勢最高のベスト8だったので、人件費に見合った結果を出したと言ってもいいのかなと、個人的には思います。

 

コスパで言うと、やはり鳥栖は素晴らしいですね。また、横浜Mは意外とコスパが良い。共に海外のクラブと提携しているのは、単なる偶然なのかどうか。



5.とうとう債務超過

最後は財政面。グランパスのバランスシートを見てみましょう。

 

 

約3億円の赤字となった影響で、とうとう債務超過(上の表の「資本(純資産の部」がマイナス)というかなり危険な状況に陥りました。

経営の安定性を示す自己資本比率(総資本に占める純資産の割合)は、一般的には70%以上が理想、40%以上で倒産しにくいと言われています。名古屋はマイナスなので、話にならないレベルに。

 

6.最後に

グランパスの経営状況については毎年、ブログで書いているのですが、2020年度以降は明らかに今までと異なる状況でした。記事を書いていて、「今までの常識が通用しないのでは」と思うことも度々です。

債務超過となった名古屋は、以下に気をつけなければいけません。

 

aboutj.jleague.jp

 

名古屋の場合、ポイントは2つ。

  1. 債務超過が解消されていなくてもよいが、前年度より債務超過額が増加してはいけない
  2. 3期連続赤字のカウントをスタートする

 

特に上記の1.ですね。今年度の当期純損益が赤字となった場合はアウトです。言い換えれば、今年度は絶対に黒字にしなければなりません。

クラブのために私たちファミリーにできることは、試合のチケットを買ったり、グッズを買ったり、DAZNの年間視聴パスを購入することでしょうか。コロナ禍の影響で今までのように娯楽にお金を使えなくなってしまった人もいるでしょうから、気軽には言えませんが、できるだけで良いので、グランパスのためにお金を使ってあげることで、クラブを支えていきましょう。

 

あとは、このお金がきちんとグランパスに支払われることを祈りましょう。web.ultra-soccer.jp



最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【参考資料】
■Jクラブ個別経営情報開示資料(令和3年度)

https://aboutj.jleague.jp/corporate/wp-content/themes/j_corp/assets/pdf/club-r3kaiji_1_20220728.pdf

■2021年度クラブ経営情報開示資料(2022.7.28現在)

https://aboutj.jleague.jp/corporate/wp-content/themes/j_corp/assets/pdf/club-r3kaiji_2_20220728_final.pdf

Jリーグマネジメントカップ2019(デロイトトーマツグループ)

www2.deloitte.com