広島対名古屋戦中止の理由は、単に「複数の新型コロナ感染者が出たから」ではない
開催可否基準「エントリー可能14人」を満たせなかったのが理由
本日行われる予定だったサンフレッチェ広島対名古屋グランパスの試合は、中止となりました。平たく言えば「新型コロナウイルス感染症の検査で3名が陽性であることが確認された」ことが理由ですが、これだけだと誤解を招きます。ポイントは「Jリーグの開催可否基準であるエントリー可能な14選手の登録が難しい」ということです。
Jリーグの試合開催可否決定条件
Jリーグによると、試合開催の可否決定条件は、以下の3つ。
さらに、「エントリー可能な選手」の定義は、以下の3つ。
- 新型コロナウイルス感染症に関するJリーグ公式検査のうち、エントリーする各試合に対して予め指定された検査において陰性判定を得ていること。または、エントリー資格認定委員会(詳細検討中)の判断によりエントリー可能と認定されていること。ただし、チームスタッフのうち、ドクターについては公式検査の受検を必須としない
- エントリー時点で体温が37.5度未満であること
- いわゆる濃厚接触者の認定や入国制限地域からの入国等により、公的機関から自宅待機等の指示を受けている状態でないこと
※各試合へのエントリー:双方のチームは、各試合において、キックオフの150分前までに「Jリーグメンバー提出 用紙」に必要事項を記入し、ホームクラブの運営担当に提出しなければならない。
試合中止に至った経緯
事実関係をおさらいすると、下記の通りとなります。
- 7/17、Jリーグ公式検査では、3名ともに陰性判定
- 7/24、宮原選手に発熱および頭痛の症状。PCR検査実施し、陽性判定
- 7/25、クラブが宮原選手の陽性判定及び濃厚接触者がいないことを発表
- 7/25、クラブ独自で60名にPCR検査を実施。陰性が確認された17名は広島へ。
- 7/26、クラブが渡邉選手およびトップチームスタッフが陽性判定を発表
- 7/26、上記2名の濃厚接触者が判明するのが試合へのエントリー期限までに間に合わない恐れがあるため、試合中止を決定
前述の通り、試合中止となったポイントは「Jリーグの開催可否基準であるエントリー可能な14選手の登録が難しい」。広島に移動し、試合に出場予定だった17名が「濃厚接触者である可能性を否定できない」と名古屋側からJリーグに相談があり、上記の「エントリー可能な選手」の定義の3番目にあたる状態と判断されたようです。
その結果、上記の「試合開催可否決定条件」の2番目にある「当該試合開催の2日前の正午時点からエントリー開始時点までの間に基準選手人数に満たない可能性がある場合、当該チームは直ちにJリーグに連絡のうえ、試合開催に向けて最大限努力」をしたものの、3番目にある「当該試合の開催が困難であるとチェアマンが判断した」ことにより、「当該試合は中止」ということになりました。
本日20時に、クラブより「渡邉選手およびトップチームスタッフとの濃厚接触者はいなかった」と発表されたため、結果論で言えば試合は開催できたのかもしれませんが、早々に試合中止を決定したJリーグ及びクラブの判断は妥当と言えます。
8/1の柏戦は予定通り開催予定
新型コロナウイルスの陽性判定者が複数出ている状況ですが、上記で説明したように、Jリーグの試合開催可否決定条件を満たせないというケースが起こらない限りは、8/1に豊田スタジアムで行われる柏レイソル戦は開催される予定です。他の試合同様、観客動員5000人以下の条件で行われる予定です。
「コロナだから」という安易な批判・偏見はやめよう
上記のことは、わざわざ私などがブログで書かなくても、例えばゲキサカの記事を読めばわかることです。
それでも記事を書いて、一人でも多くの方に知って欲しいと思ったのは、単に「新型コロナの感染者が複数出たから」という理由で試合中止を決めたわけでなく、事前にJリーグが決めたルールに基づいて、かつ名古屋が「エントリー可能な14選手を揃えることが難しい」とJリーグ側に相談した結果により、試合中止を決めたという経緯があるからです。
恐らくワイドショーなど良識に欠けるテレビ番組は、今回説明したような事情は説明せず、単に「新型コロナの感染者が出たから中止になった」とだけ報じて、最悪の場合、Jリーグや名古屋の対応を批判する可能性もあります。
今回の件に限らず、新型コロナの感染者に対する偏見が問題視されて久しいですが、感染した自体は「悪」ではありません。もちろん、「マスクをしない」「三密を避けない」など、感染対策を怠るような行動は批判されても仕方ありませんが。
今回のケースは、Jリーグが想定したものとは少し異なるものだと思います。今回のようなケースが今後も起こる可能性は否定できません。今まで経験したことのない状況ゆえに、こうした想定外のケースを踏まえて、より良い対応策を考えて欲しいです。
最後になりましたが、今回陽性判定を受けた3名の一日も早い回復を祈っています。