「止める・蹴る」から「ウノゼロ」へ。進化した2020年のグランパス
1. 9年ぶりのACL出場権獲得
新型コロナウイルスの影響を受け、特殊なシーズンとなった2020年のJ1リーグ。我らが名古屋グランパスは、シーズン序盤から上位をキープし、3位でフィニッシュ。9年ぶりとなるACL出場権(グループステージからの参加)を獲得しました。
近年は残留争いとなるシーズンが多かっただけに、J1の舞台で上位争いができ、目標であるACL出場権を獲得できたのは、本当に喜ばしいことです。
今回は、そんなグランパスの2020年シーズンを振り返ります。
2. データで振り返る2020年のグランパス
(1)リーグ最少失点&17完封
リーグ戦34試合で28失点、これは今季のJ1で最少。さらに、17完封は2008年の大分と並ぶJ1タイ記録。生まれ変わった「堅守・名古屋」を象徴する数字ですね。
17 - ランゲラックは、今季出場した34試合中17試合で無失点。2014年に西川(浦和)が達成した16試合無失点を抜き、J1新記録を樹立。守護神。#grampus
— どらぐら/dragra (@dragra_758) 2020年12月19日
また、個人記録としては、ランゲラックはJ1新記録。今季はPKを2回中2回ストップするなど、J1ベストイレブンに選ばれていてもおかしくない活躍でした。
(2)ホームで強い名古屋
12 - 名古屋は今季ホームで12勝3分2敗。J1が34試合制になって以降では、最多の勝利数。ホームで挙げた勝ち点39も、過去最多。聖地&要塞。 #grampus
— どらぐら/dragra (@dragra_758) 2020年12月19日
今季のJ1のホームチームの勝率は38.6%と例年より低めなのに対し、我らが名古屋は70.6%と、ホームでの強さが際立っていました。新しい観戦様式により、声による応援はできなかったものの、J1最多の年間ホーム入場者数(159,694人)を記録するなど、ファミリーの熱い気持ちが選手たちに届いた結果なのかなと思います。
(3)先制した時の勝率は2位
【J1 先制した時の勝率】#grampus
— どらぐら/dragra (@dragra_758) 2020年12月27日
1位 鹿 島 13勝1分0敗 .929
2位 名古屋 16勝0分2敗 .889
3位 F東京 14勝1分1敗 .875
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18位 湘 南 6勝5分5敗 .375
先制した試合で16勝を挙げた名古屋。うち、9試合は1-0。ウノゼロ。https://t.co/mS32dVdncj
先制した時の名古屋は、9割弱の確率で勝利しています。1-0、いわゆるウノゼロで勝利した試合は実に9試合。堅守のチームだからこそできることですね。
(4)チーム内得点&アシストランキング
【2020年名古屋・得点ランキング】
— どらぐら/dragra (@dragra_758) 2020年12月26日
🥇マテウス:9点
🥈前田直輝:7点
🥉金崎夢生:6点
4位:シャビエル、阿部浩之(4点)
名古屋グランパス 2020 シーズンサマリー | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB https://t.co/UQ53OQjDB1 #footballlab #grampus
【2020年名古屋・アシストランキング】
— どらぐら/dragra (@dragra_758) 2020年12月26日
🥇マテウス:8アシスト
🥈金崎夢生:4アシスト
🥈シャビエル:4アシスト
4位:山﨑凌吾(アシスト)
名古屋グランパス 2020 ランキング | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB https://t.co/GEjhxuD5O2 #footballlab #grampus
攻撃面で言えば、やはりマテウスの貢献度が光ります。また、1トップとして奮闘した金崎夢生の献身も見事でした。来年は怪我をしっかり治して、シーズン後半に元気な姿を見せて欲しいです。
(5)5選手が全試合出場
3,060 - 今季のJ1で全試合にフル出場したフィールドプレイヤー3選手のうち、2名は名古屋所属(中谷進之介、丸山祐市)。
— OptaJiro (@OptaJiro) 2020年12月19日
3,060 - 中谷 進之介(名古屋)
3,060 - 丸山 祐市(名古屋)
3,060 - マテイ・ヨニッチ(C大阪)
3,036 - 稲垣 祥(名古屋)
2,914 - マテウス(名古屋)
皆勤賞。 pic.twitter.com/6mvCm1CPgn
GKランゲラックを含め、5選手が全試合出場。特に中谷、丸山はフィールドプレーヤーでありながら、34試合フルタイム出場でした。本当にお疲れさまでした。
3. 課題とまともに向き合った結果の「躍進」
前述のように、今季の名古屋が3位と躍進した要因は、守備を立て直したことです。失点が40を下回ったのは、2011年以来9年ぶりです。
近年の名古屋が低迷した理由が、不安定な守備であることは明白でした。2013年オフに、増川・阿部・田中隼磨の主力DFを大量放出して以降、成績は安定しませんでした。とりわけ、J1降格が決定した2016年は58失点、ギリギリで残留した2018年はリーグ最多タイの59失点でした。「攻守一体の攻撃サッカー」を掲げながらも、「攻」を重視し「守」を軽視した結果だと思います。
2019年シーズン途中に就任したマッシモ・フィッカデンティ監督は、守備の立て直しを図ります。風間八宏前監督の方針から180度転換するようなサッカーに拒否反応を示すファミリーも少なくありませんでしたが、「ようやく課題の守備を本気で強化するつもりになった」と、当時の私は肯定的に捉えていました。
今年の初めにも、期待を込めた記事を書いていました。
その後の結果は、皆様ご存じの通り。名古屋に必要だったのは、「止める」「蹴る」よりも「ウノゼロ」だったのかなと、シーズンを終えた今になって思います。
守備のスペシャリストであるマッシモの戦術が浸透し、選手たちは各々の役割を全うしました。前線からしっかりとプレスをかけ、中盤では稲垣&米本のドイスボランチがフィールド狭しと動き回り、最終ラインの負担を軽減。対人守備に強さを発揮する吉田豊とオ・ジェソクがサイドに蓋をし、3年目を迎えた丸山&中谷のCBコンビは阿吽の呼吸でピンチを防ぎます。シュートを打たれたとしても、最後尾に控えるランゲラックがファインセーブで得点を許しません。ピッチのいたる所に張られた守備網が、名古屋の「進化」の証だと言っても過言ではないでしょう。
「手堅く勝ち点1を大事にしてゲームを進めることが大事」という稲垣の言葉に代表されるように、ピッチに立つ11人全員が高い守備意識を持ち、走り回り、体を張って、厳しいシーズンを戦い抜いた「マッシモ名古屋」。良い意味で「グランパスらしくない」好チームになったと、個人的には思っています。
サッカーの「エンタメ性」についての議論をインターネット上で見ましたが、チーム一丸となり戦って勝利を重ねる姿は、私にとってなかなかの「娯楽」でした。
4. 2021年、さらなる「進化」を
来季は9年ぶりにACLを戦うことになるグランパス。今季は下馬評を覆す素晴らしいシーズンとなりましたが、現状維持では降格が4枠となる過酷なJ1リーグ、そして猛者が集うACLを戦い抜くことはできません。
補強は着々と進んでいますが、それだけでなく、若手のさらなる台頭が必要です。守備はかなり改善されましたが、攻撃についてはタレントを考えたらもっとできると思います。
正直な話、ACLを戦いながら、再び3位以内になるのは今季以上に大変なことだと思います。しかし、今季のサッカーをベースにさらなる進化をみせて、「強いグランパス」を確固たるものにしてくれることを期待しています。